QNAPのNASでは、QuTS hero h5.3.0より2ノードで構成される”アクティブ-スタンバイ"型の高可用性ソリューション(HA)をβサポート開始しました。
早速、HAを構成してテストしてみました!
HA構成を組むための必要条件
HAを組むためには、ハードウェア構成が同等な2つのNAS製品が必要となります。すなわち、
・同じCPUを搭載していること(同じシリーズ程度であれば問題なさそうです)
・同じ容量のRAMを搭載していること
・同じ容量、台数のHDD/SSDを搭載していること
・同じ数量、速度のEthernetを搭載していること。
本テストでは、TS-h1290FX(細かい型番では、TS-h1290FX-7232P-64GとTS-h1290FX-7302P-128G)を2台使用してテストしてみました。
※TS-h1290FX-7302P-128Gについては、128GBのままではメモリ容量が異なるということでHA構成を開始できませんでしたので、64GB分のメモリを抜いて、64GBにしたうえでHA構成を組むことができました。
2025/5/15現在、TS-h1290FX用のファームウェアはこちらから “h5.3.0.3115 build 20250430” をPublicBetaとしてダウンロードできます。また、5.3.0を適用済みというところからの手順をご紹介します。
ちなみに手元ではこんな感じで構成が組めています。
HA構成のセットアップ
High Availability Managerの起動とセットアップ
HA Managerのインストールが無事に完了すると、"High Availability Manager"のアイコンが追加されます。アイコンをクリックして起動し、セットアップしていきます。
High Availablity Managerを起動すると、こちらのような設定画面が表示されます。
注意事項として記載されているのは次の通りです。
高可用性クラスター
高可用性は、サービスに対して最大限の継続性を提供します。冗長性、データ複製、自動フェイルオーバーにより、高可用性クラスターは、最小限のサービス中断でデータがアクセス可能であり続けるようにします。
高可用性クラスターが含むもの
・すべての運用サービスを提供するアクティブノード。
・パッシブノードは通常スタンバイしており、アクティブノードとデータを連続的に同期します。パッシブノードは、HAの状態の表示およびログの表示目的でのみアクセス可能です。
・ある一時点でどちらのデバイスがアクティブノードかにかかわらず、同じネットワークアドレスでデータやサービスにアクセスが可能なクラスター接続。
・デバイス間で常にデータが同期されていることを確認するための、アクティブノードとパッシブノード間のハートビート接続。これにより、シームレスなフェイルオーバー処理が可能になり、継続的なサービス可用性が実現します。
次に、HAを組む際の必要条件が表示されます。
ざっくりとは、
・2つの同じモデルで、ファームウェア、ハードウェア構成はHDD/SSDの取り付けられているスロット、メモリ容量など含め、同一である必要がある。
といった感じです。
注意書きを確認して、"次へ"進みます。
ノード間では、クラスター接続用のインターフェースと、ハートビート用のインターフェースが必要ということですので、2つある2.5GbEポートのうち1つを使ってハートビート接続を構成します。
IPアドレスはそれぞれ"192.168.252.100", "192.168.252.200"と固定IPで設定しました。
※いきなり"ハートビート"という言葉が出てきましたので、少しだけ補足します。ハートビート=Heart Beatとは、直訳すると"心臓の脈動"のことになります。クラスターシステムのように"片方が落ちたら昇格して代わりに動作する"という動きを実現したい場合、"正常にサービスが稼働されているかどうか?"を確認することが必要になります。この確認のためのやり取りを"ハートビート"といいます。"ハートビート接続で相手方の生存状態を確認し、もし死んでいたら自分が昇格してサービス提供する"という動きになります。
インターフェースを選択して"次へ"進みます。
ハートビート接続側のIPアドレスが静的IPになっていると、必要条件から外れてしまうようで、こちらはDHCP(DHCPサーバーがいないので、実質Auto IP)に設定しておく必要があります。
ハートビート接続の確認が完了すると、パッシブノード側の管理者ユーザー名とパスワードを入力します。
こののち、パッシブノード側の情報を取得してきて、クラスター構成の要件を満たしているかどうか?の確認がされます。
この時点で、パッシブノード側に"HA Manager"がインストールされていないと、インストール必要の旨が表示されます。予めパッシブノード側にも"HA Manager"をインストールしておくとよいかと思います。
また、2台のNASでメモリ容量など構成が異なっていると、次のステップでその旨注意され、進めることができません。予めHW構成も併せておくことをお勧めします。
また、クラスター接続側は、静的IPに設定されている必要があります。
というわけで、DHCPサーバー側と合わせて、静的IPを設定します。
静的IPを設定すると、すべてOKになりました。
"次へ"をクリックして進むと、クラスターとしてのホスト名とIPアドレスの設定になります。
クラスターの設定が完了しました。
"次へ"を押すと、クラスターの初期化が始まります。
クラスターの作成が開始されます。
しばらく待つと次のような画面が出て設定完了となります。
クラスターの設定が完了した後は、クラスターとしてのIPアドレスでエクスプローラなどからでもアクセスできるようになります。
HA的な動きを確認してみる
手元のHA構成は、少し古いβのFWで構築したので、最新版のPublic Betaよりも若干古いバージョンになっています。まずは最新版のPublic Betaのファームウェアを当ててみる。というところで動きを確認してみたいと思います。
HA構成されている状態で、最新のファームウェアを適用してみます。
iSCSIに関する警告が表示されます。
先に進めると、「更新中は電源を落とさないでください」の旨の注意事項が表示されます。
ノードが1つ再起動中ですが、SMBでアクセスすることができています。
TSH1290-7C13BEがファームアップデート完了し、再起動も完了した後、もう一台の方もカーネル更新からファームウェアアップデートが開始されます。
しばらく待つと無事にファームウェアアップデートが完了しました。
手動でのスイッチオーバーを試した場合、途中一時的にpingが途絶えますが、
スイッチオーバー完了後に同じIPアドレスでpingに応答が復活することが確認できます。
まとめ
QNAPの新しいソリューションである2ノード構成によるHAを試してみました。
セットアップ手順と、セットアップに必要な要件、スイッチオーバーや、フェイルオーバーの際に一時的にネットワークの応答がなくなりますが、すぐに復活し同じIPでアクセスし続けられることが確認できました。
データの同期自体はSnapSyncでリアルタイムでできていたのですが、いざ故障となるとIPを変えたりと手間がかかっていた部分がこれでかなりすっきりきれいにHA構成を組めるようになったかと思います。
"NASを2台入れてミラーリングしてBCPに備える。"といったような使い方をされているお客様、してみていお客様はぜひこちらのHAについて試してみていただけるとよいかと思います。
まだ環境は崩していませんので、何か気になるところなどありましたら、お気軽にご質問ください!